平凡社地図出版

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図説・西九州新幹線開業後の変化

路線網図に変化なし、に見えるけれど…

図説・西九州新幹線開業後の変化

2022年9月23日、様々な問題・課題を抱えながらも西九州新幹線が開業しました。また、西九州新幹線が誌面に掲載された大型時刻表の最新号もすでに世に出ています。すでに手に取ってご覧になった方は、本文の体裁が大きく変わり新鮮に映ったことでしょう。ただ、そんな中でも思ったほど変化がなく拍子抜けに思えたのは…そう、冒頭の索引地図です。

当然、武雄温泉〜長崎間に新幹線が挿入されたことだけでも相当衝撃的ですが、ではその近辺は…と視線を移すと、驚くほど何も変わっていません。あら探しをすれば、大村線に新駅「大村車両基地」が開業したこと、長崎本線と佐世保線の分岐点だった肥前山口が「江北」に名称変更したこと、本当に変化はこの程度です。ちなみに誤解なきよう補足しておくと、駅名の示す「車両基地」は大村線のものではなくて、西九州新幹線の車両基地を指します。大村線の車両基地は従来長崎駅構内にありましたが、駅周辺の高架化及び新幹線の駅構築用地を捻出するため、すでに早岐駅構内に移転を済ませています。

実は、最近の新幹線開業において「ほとんど周辺に変化がない」こと自体、異例中の異例です。長野冬季五輪を見据えて1997年秋に開業した北陸新幹線(当時は長野行新幹線と称していました)以降、整備新幹線開業は、並行在来線の処遇問題と表裏一体でした。大半の客は速達性に勝る新幹線に移行し、残された在来線は遠距離客需要を見込めなくなって不採算に陥る…まさに新幹線の「陰」に相当する部分が沿線自治体を悩ませ、常につきまといました。一部例外を除き大半は、経営を従来のJRから切り離して第3セクター鉄道に移行する道を辿っています。

ところが今回の西九州新幹線開業で、同時に新たな鉄道会社開業が報じられることはありませんでした。索引地図がほとんど代わり映えしなかったのもそのためで、誰の目にも「並行」と思われる区間はことごとくJR線として描かれたままです。

西九州新幹線開業後の鉄道網図。索引地図から分からない変化は様々あることが分かる

なるほど、西九州新幹線開業で並行在来線の存続問題は穏便に解決したのか、と思われがちですがそんなことはありません。上図のように、索引地図だけでは分からない微妙な変化が生じていて、今後の行く末に影を落としています。一見何の変化もなくJR運行のまま推移したように見える肥前山口(現・江北)〜諫早〜長崎の並行区間のうち、人口および利用客が比較的少ないと目された江北〜諫早間はJRによる引き続き直営では荷が重く、鉄道施設部分を地元の両県(佐賀・長崎)が保有・管理し列車運行をJR九州が引き続き行う、いわゆる上下分離方式に改められました。さらに、管理が厄介な交流電化設備は運行本数を勘案して不要と判断され、佐賀方面からの直通電車が残存する肥前浜までを残し、その他区間(肥前浜〜長崎間)は電車の運行を諦めすべて内燃車両(気動車)での運行に改まってしまいました。並行在来線で、新幹線開業後に電気設備を取り払ってしまうケースは過去になく、変わりないように見えた鉄道網図には隠れた意外な変化があったのです。

もっとも新幹線開業に限らなければ、電車の運行を諦めて気動車に切り替えたケースはあり、栗原電鉄(→くりはら田園鉄道へ移行)と名鉄三河線山側末端区間・名鉄八百津線がそれです。ただ不吉なことを言うようですが、これら3路線は気動車化後も運営が好転せず、いずれも路線廃止の憂き目を見ています。またこの春から、廃止こそ危惧されないもののJR磐越西線の既存交流区間・会津若松〜喜多方間で電車が運行されなくなって地元で論争が起きています。間違いなく言えるのは、これら施策は決して積極的方針転換ではなく先行きが厳しいからこその変更であり、地図上の変化が少なかったのは決して並行在来線にとって安心材料ではないのです。

地図往来

地図制作の現場体験から「地図」の魅力を多方面にわたり語って参ります。地図はおもに私達の生活する地球上の時空間の仕組みを図化するものです。従って、自然、人文現象等、森羅万象を対象といたします。縮尺の概念が絡む世界ですが、大変広域に、また奥深く・・・お楽しみに!

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